2010年04月25日

『障害者の「罪と罰」:イギリスからの報告・中』

毎日新聞の連載から

毎日新聞 2010年4月10日
障害者の「罪と罰」:イギリスからの報告/中 段階踏んで、地域に復帰

【抜粋↓】
 ◇治療・教育から、常時見守りつき自立へ

 冬の日を浴びる広大な敷地に木々が立ち並ぶ。ロンドンから北へ空路1時間、ニューカッスルのノースゲート病院には約200人の患者が暮らしている。ほとんどに知的障害があり、自閉症の人も30人。重大事件を起こした発達障害者に対する矯正プログラムが日本の刑務所や少年院にはほとんどないが、イギリスにはさまざまなレベルの治療・矯正施設がある。

「まずその人にどのような支援が必要なのか、医療やコミュニケーション、身体感覚の面からのアセスメントを12週間かけて行い、個別支援計画を作ります。日常生活を営む基本的な能力が欠けている人が多く、園芸活動、室内作業、運動、認知行動療法などを行っています」

 入院患者のほとんどは2〜3年以内に退院するという。病棟の周囲に高いフェンスが張り巡らされ、監視カメラが常時作動しているのを除けば、日本の知的障害者入所施設によく似た雰囲気だ。

 イギリスには保安の必要性の程度によって高度保安病院、地域保安ユニット、低度保安ユニットの3段階に分かれた治療施設がある。事件を起こした人は責任能力の有無にかかわらず、精神科のケアが必要だと認められると治療施設に収容される。地域保安ユニットであるノースゲート病院には中度保安病棟、低度保安病棟、自閉症専用病棟などがあり、高度保安病院から症状が改善されたとして移ってくる触法の患者たちもいる。

   *

 虐待を受けたり劣悪な環境で育ってきた障害者に対して、自分に自信を持ち、コミュニケーションや感情のコントロールができる能力を身につけることを目指している。
発達障害者の中には相手の気持ちに共感することが苦手な人がいる。日本でもそのような人が事件を起こし、警察の取り調べや公判でのとっぴな発言を報道され物議をかもすことがある。「反省していない」「被害者をぼうとくしている」などと糾弾され、厳罰を求める声が高まったりする。

 こうした障害者に対する刑事政策や世論の問題は、ノンフィクション「死刑でいいです」(共同通信社)に詳しいが、共感や反省は苦手でも、法を犯さないスキルは身につけられるのではないか。そのための支援を研究し実践している専門家も多くはないがいる。

 「ノースゲート病院は認知行動療法を中心に自分のやったことを見つめることを重視している」
刑罰ではなく治療や教育によって尊厳や自信を身につけ触法のリスクをなくしていく方針は、どのレベルの保安施設も一貫している。

   *

 イギリスは60年代から大規模入所施設が解体され、障害者は個々を対象にした福祉サービスによって街での自立生活が保障されてきた。重要事件を起こした障害者も例外ではない。法務省の教育・支援プログラムに基づき、6〜12人がローテーションを組んで地域社会に戻った触法障害者の生活を見守る。障害者の人権と社会の安全や安心感を両立させるためのコストなのである。
→上)(→下

死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人
 池谷孝司(編著)、真下周(著)、佐藤秀峰(イラスト) (著)


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